先日,刑事弁護に関する研修を受けました。
近いうちに,刑事手続に大きな変化があるためです。
まずは,全ての勾留事件について,被疑者国選弁護人が選任されるようになります。
今まで,法定刑が一定のもの以上の事件についてのみ,起訴される前に国選弁護人が選任されていましたが
これが,全ての事件が対象になるというものです。
次に,司法取引制度の導入です。
外国では,罪について自白すると,刑が軽くなるといった制度が以前からあり,司法取引と呼ばれています。
今回,導入される日本版司法取引は,自分の罪に関する供述・証言ではなく
他の人の罪について,真実の供述・証言を行うことを約束する代わりに
自分の罪について不起訴などの恩恵を受ける制度です。
例えば,AとBの共犯事件において,Bが犯罪行為を否認しており,Aがそれについて黙秘している場合に
Aに真実の供述・証言をしてもらう代わりに,Aは不起訴にするというものです。
もう一つは,刑事免責制度の導入です。
刑事裁判に証人として出廷する人は,自己が刑事訴追を受けるおそれがある場合などは証言を拒絶する権利がありました。
今回,導入される刑事免責制度は,この証言を拒絶する権利を無くす代わりに
証言をした内容については,自己の刑事裁判において証拠として取り扱わないというものです。
例えば,CとDの共犯事件において,Dが犯罪行為を否認しており,Cがそれについて黙秘している場合に
Dの刑事裁判において,Cに証言拒絶させずに証言をさせる代わりに
Cの刑事裁判では「CとDが一緒に犯罪行為をした」という証言を証拠としては使えないようにするというものです。
司法取引も刑事免責も個人的には問題の多い制度だと思っています。
例えば,上の例で言えば,AもCも,自分が助かりたいがために
B・Dについて,ありもしないことを供述・証言する可能性があります。
(この点については供述・証言の信用性が十分に吟味される必要があります)
特に問題だと思うのは,上の例で,Cが黙秘している場合に
Dの刑事裁判では,証言を拒絶できないため,事実上,Cの黙秘権を奪う結果となると思うからです。
これは,憲法違反の可能性すらあるのではないかと思うところもあります(憲法38条)。
さらに言えば,刑事事件では証拠として扱われないとしても
民事事件で証拠となる可能性がある点でも問題があります。
これは制度の運用を注視していく必要があると思います。
とても真面目なことを書いてしまいました。